令和3年3月現在の建設業許可業者の現況が公表されていました。
許可業者数は、全国で473,952業者で、わずかながら3年連続で増加しているものの、最盛期(平成12年3月末)に比べると20%余りの減少とのこと。業種別や資本金階層別の許可業者数などが報告された中に、昨年10月の法改正で創設された事業承継による認可件数も出ています。調査時点で半年経過したことになりますが、全体で203件、内訳は次のとおりです。
- 譲渡及び譲受 147件
- 合併 22 件
- 分割 10 件
- 相続 24 件
改正された法律の条文は前に投稿していますが、制度のポイントや実務の要領などまとめておきます。
法律は、第17条の2に譲渡・譲受、分割、合併の手続き、第17条の3に相続の手続きを定めています。第17条の2は次のパターンになります。
- 事業の譲渡(第17条の2第1項)
法人の事業譲渡・譲受と個人事業主の法人成りまたは生前の事業承継 - 合併(第17条の2第2項)
法人の吸収合併、新設合併による承継 - 分割(第17条の2第3項)
法人の分割による承継
これらの新たに設けられた承継制度によって、建設業者は、国土交通大臣または都道府県知事の認可を受けることによって、建設業の許可を承継させることができます。
承継(相続を含む)の認可は承継される側(被承継人といいます)の許可のすべてを対象とします。許可の一部だけを承継することは認められません。
なお、承継の認可に当たっては、承継する側(承継人といいます)が承継する建設業の許可基準を満たしていることが要件になります。許可基準については、当サイトの許認可ガイド〈建設業許可〉に5項目を掲げています(骨子だけですが)が、これらをすべてクリアする必要があります。
建設業の許可は、業種区分に加え、大臣許可か知事許可、一般建設業か特定建設業といった区分があります。被承継人の許可を承継する場合、それらの区分に応じて許可基準も多少変わってきますので、それを考慮しなくてはなりません。例えば、承継人がすでに許可業者である場合、既存の許可と承継する許可との関係で認可申請が錯綜することが考えられますので注意が必要です。
承継の効果
承継の認可によって承継人は建設業者の地位を承継しますが、それは次のような取り扱いになります。
- 許可番号は原則として承継前の被承継人の許可番号を引き継ぎます(承継人がすでに建設業者だった場合は例外あり)。
- 認可後の許可の有効期間は、承継の日の翌日から5年間(5年後の承継の日まで)とされています。
- 被承継人の経営事項審査結果、建設業法に基づく監督処分は承継します。同法に基づく罰則処分は承継しません。
認可申請の留意点
認可の申請は所定の申請書類と疎明資料を行政庁に提出することになりますが、許可の基準を満たすことのほかに次のような留意点があります。
- 承継の事実を証明する契約書・議事録等の提出
- 相続の場合は相続関係が確認できる戸籍謄本及び相続人全員の同意書の提出
- 健康保険等の適用事業所に該当する場合は、それらに加入していること(または認可後加入すること)
なお、認可に当たって役所に納付する手数料は不要です。
承継・相続の手続きの概要については上記のようなものですが、申請書類と添付資料だけでも新規許可申請と同等の事務になりますので、事前準備にある程度の時日を要することを念頭に置くべきでしょう。認可申請の期限については、17条の2による承継については自治体によってまちまちですが、相続については被相続人の死亡後30日以内に申請することとされています。
建設業許可の承継については以上ですが、事業承継に当たっては当然事業用資産の承継の問題もあります。とりわけ個人事業の場合は、相続・贈与といった問題が絡んでくるかと思いますので無用な紛糾が生じないよう留意すべきでしょう。