令和5年1月実施の経営事項審査の項目と基準に関する改正について、最後に「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況(W1-10)」について見ておきます。
この項目は、建設工事の担い手の育成・確保に向け、技能労働者等の適正な評価をするためには、就業履歴を蓄積するための環境を整えることが必要という主旨に基づき、すでにその目的に沿って構築・運用されているキャリアアップシステム(CCUS)の活用状況を評価するものとなっています。
建設キャリアアップシステムの簡単なフローはつぎのようなものです。
- 技能者等の情報をシステムに登録する。
- 技能者に対してカードを交付する。
- 技能者が工事現場に入るときカードリーダーで情報を読み取る。
- これによって技能者の就業履歴がシステムに蓄積される。
W1-10は、審査基準日以前1年内に発注者から直接請け負った工事についてキャリアアップシステムへの対応措置を取っている場合に、その状況に応じた加点が行なわれます。具体的な対応については、次の1の審査対象工事について、2の措置を実施することとされています。
1.審査対象工事については次のようになります。
- 日本国内における工事であること
- 軽微な建設工事でないこと。
軽微な建設工事とは建設業許可の対象とならない工事、つまり工事一件の請負代金の額が500万円(建築一式工事の場合は、1,500万円)に満たない工事または建築一式工事のうち延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事をいいます。 - 災害応急工事でないこと。
防災協定に基づく災害応急対策またはすでに締結されている建設工事について発注者の指示により行なう災害応急対策は審査対象から除外されます。
2.必要な措置については次のすべてに対応していることとされています。
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)において現場契約情報の作成・登録を行なっていること。
- 建設工事に従事する者がCCUSに直接入力によらない方法で就業履歴を蓄積できる体制を整備していること。
「就業履歴データ登録標準API連携認定システム」(運営主体である建設業振興基金の認定を受けたAPIシステム)によって、入退場履歴を記録することが前提になります。 - 経営事項審査時に、所定の様式(様式第6号)によって、対応する措置を行なった旨の誓約書を提出すること。
上記の場合に、次の加点が行なわれます。
- 審査対象工事のうち、民間工事を含むすべての工事で上記の措置を実施した場合……15点
- 審査対象工事のうち、すべての公共工事で上記の措置を実施した場合……10点
なお、この改正については令和5年8月14日以降に審査基準日が来る申請から適用されることになっています。審査基準日以前1年以内にこの措置を行なっている場合に加点されるということですから、今回の改正告示が公布された令和4年8月15日以降に対応措置を実施した場合が想定されていることになります。審査基準日は受審する直前の事業年度の最終日ですから、場合によっては事業年度との関連にも留意が必要になりそうです。
建設キャリアアップシステムについては、改めてその内容を整理しておきたいと思いますが、詳細については〈建設キャリアアップシステム〉公式サイトを参考にしていただくといいでしょう。
以上、令和4年8月15日付国土交通省告示827号による経営事項審査の項目と基準に関する改正の概要でした。