経営業務管理責任者等について

建設業の許可の基準は、経営能力、財産的基礎、技術力、誠実性の4項目で構成されています。このうち経営能力についての基準は一般建設業、特定建設業に共通する内容で、「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること」として以下のように、経営業務の管理責任者に関する事項と、社会保険等の適用に関する事項とが定められています。それぞれの考え方についてまとめておきます。

国土交通省令で定める基準の第1号に、経営業務の管理責任者に関する事項、第2号として社会保険等の適用に関する事項が定められています。第1号については、ここに示されている要件に適合する経営業務管理責任者が、第2号では健康保険・厚生年金保険・雇用保険の適用事業所に該当する場合の対応が求められています。

経営業務管理責任者

経営業務の管理責任者については、以下の基準によりその範囲が定められています。

次のいずれかに該当するものであること。

イ 常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。

  1. 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
  2. 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
  3. 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者

ロ 常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であつて、かつ、財務管理の業務経験(許可を受けている建設業者にあつては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあつては当該建設業を営む者における5年以上の建設業の業務経験に限る。)を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置くものであること。

  1. 建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
  2. 5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者

ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定したもの。

経営業務の管理責任者については、上記のイ、ロ、ハのいずれかに該当することが求められます。

ここにいう「経営業務の管理責任者としての経験を有する者」というのは、「業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある各種組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、経営業務の執行等建設業の経営業務について総合的に管理した経験を有する者」とされています。

イに該当する場合は、該当する人を経営業務管理責任者とすることができます。

ロについては、イに該当する人がない場合、それに準ずる経験を持つ常勤役員等に、そこに示す補佐を置くことで、この基準を満たすというものです。つまり、「かつ」とあることに注意が必要で、〈ロの1、2のいずれかに該当する〉常勤役員等に加え、〈財務管理の業務経験を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置く〉ことが求められています。補佐の業務経験について3分野が示されていますが、状況に応じ1人が複数の経験を兼ねることも可能としています。

なお、「常勤役員等」とは、法人の常勤役員、個人の事業主または支配人をいいます。また、「役員」とは、持分会社の業務を執行する社員、株式会社の取締役、指名委員会等設置会社の執行役またはこれらに準ずる者とされています。準ずる者についてはケースバイケースになりますが、通常、執行役員、監査役、会計参与、監事等は該当しないとされています。個人事業の支配人は、支配人登記がされているかどうかによって判断します。

社会保険等の対応

社会保険等については、健康保険・厚生年金保険・雇用保険についてそれぞれの法律で規定される適用事業所に該当する場合の事業所の対応について、以下のように定められています。

次のいずれにも該当する者であること。

イ)健康保険法の適用事業所に該当する全ての営業所に関し、健康保険法の規定による届書を提出した者であること。

ロ)厚生年金保険法の適用事業所に該当する全ての営業所に関し、厚生年金保険法の規定による届書を提出した者であること。

ハ)雇用保険法の適用事業の事業所に該当する全ての営業所に関し、雇用保険法の規定による届書を提出した者であること。

上記のとおり、事業所がそれぞれの保険制度の適用事業所に該当する場合、適用事業所の届出を行なっていることが必須要件になります。

健康保険・厚生年金保険は、法人については加入が義務づけられていますので必ず適用事業所になります。個人事業の場合は従業員が常時5人以上いる事業所は必ず適用事業所になります。

雇用保険については、法人・個人を問わず従業員を一人でも雇用している場合、適用事業所になります(ただし、従業員の労働時間、年齢等によって被保険者になれない場合もあります)。

この届出は、それぞれの保険制度によって、「新規適用事業所の届出」、「適用事業所設置の届出」などと呼ばれているようです。