8月に公布された経営事項審査の改正については、すでに概要をお伝えしましたが、令和5年1月実施部分についてもう少し詳しく見ておきます。
経営事項審査の概要は、〈建設業許認可まとめ〉にアップしていますが、審査項目は次のような構成になっています。
- 経営規模(X1、X2)
- 経営状況(Y)
- 技術力(Z)
- その他社会性(W)
これらの各項目についてそれぞれ細かい審査基準が設けられていますが、今回の改正は、このうち「その他社会性(W)」の一部の基準の変更(追加等)になっています。あらまし次のようになります。
- 改正前の審査項目(W)は、W1~W10までありましたが、改正前のW9(W1-7に)とW10(W1-8に)がW1に移動しています。これによってW項目はW1~W8(下記)に整理されました。
- W1については、W9、W10をここに移動したのと、新たにW1-9として「ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況」、W1-10として「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」を新設し、従来W項目全体を「労働福祉の状況」として評価していたのを、「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況」として評価する構成としています。
- W7「建設機械の保有状況」について、対象となる建設機械の範囲が拡大されました。
- W8「国際標準化機構が定めた規格による登録状況」について、評価項目を追加し、「国又は国際標準化機構が定めた規格による登録状況」として評価する内容に改正されました。
これによって、W=その他の審査項目(社会性等)部分が次のように変更されます。(朱書が内容に変更のある項目です)
W1:担い手の育成及び確保に関する取組の状況
W2:建設業の営業年数
W3:防災活動への貢献状況
W4:法令遵守の状況
W5:建設業の経理の状況
W6:研究開発の状況
W7:建設機械の保有状況
W8:国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況
さらに、W1は次のように細分化されます。
- 雇用保険の加入状況
- 健康保険の加入状況
- 厚生年金保険の加入状況
- 建退協の加入状況
- 退職一時金もしくは企業年金制度の導入
- 法定外労災制度の加入状況
- 若齢技術者及び技能者の育成及び確保の状況
従来W9として独立した項目だったのが、ここ(W1-7)に移動します。基準の内容については変わりませんので今回の記事では取り上げません。 - 知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況
従来W10として独立した項目だったのが、ここ(W1-8)に移動します。これも内容は従来と変わりませんので今回の記事では取り上げません。 - ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況
W1-9として新設されます。 - 建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況
W1-10として新設されます。
個別の変更内容について、改めて詳しく見ておきたいと思いますが、その前にこの改正の実施のタイミングについて確認しておきます。
施行期日は令和5年1月1日とされています。一方、経営事項審査は通常会計年度(4月~翌年3月)を区切りとして行なわれています。それと受審する建設業者の審査基準日は事業年度を単位としますので、事業者ごとに異なります。こうしたことから、改正内容に該当する受審者にそれが反映するタイミングには微妙なずれが生じます。
その点にも留意しながら、個別に詳しく見ておくことにします。
1)1月1日実施
以下は審査基準日現在で該当している場合に、1月1日以降の申請で適用されます。行政機関の事務は会計年度(4月~翌年3月)を区切りとするのが通例ですが、その視点で見れば、この改正については令和4年度中の実施ということになります。ただし、行政機関によって令和4年度の審査受付には定められた日程がありますので留意が必要です。
① W1-9「ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況」
審査基準日において、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」に基づくえるぼし認定、「次世代育成支援対策推進法」に基づくくるみん認定、「青少年の雇用の促進等に関する法律」に基づくユースエール認定を受けていることが加点対象となります。
② W7「建設機械の保有状況」
対象となる建設機械が追加されています。具体的には、「大型ダンプ車」が「ダンプ車」に変更され、「締固め用機械」、「解体用機械」、「高所作業車」が追加されました。
③ W8「国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況」
従来のISO9001、ISO14001に加え、エコアクション21の認証を受けている場合が加点対象に追加されました。
2)審査基準日が令和5年8月14日以降に来る申請で適用
W1-10「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」は申請する建設業者のキャリアアップシステム(CCUS)の導入を評価項目とするものです。その内容はべつに書きますが、審査基準日が令和5年8月14日以降の申請について、その審査基準日を基礎としたCCUSの導入の状況によって加点されます。
稿を改めて個別の詳しい内容をチェックしておきます。